昭和49年卒業生より(創立50周年記念誌より)
- 公開日
- 2015/12/20
- 更新日
- 2015/12/20
その他
本校の創立50周年記念式典が開催されたのは平成10年10月31日でした。当時発行された<創立50周年記念誌>に、卒業生の回顧文が掲載されれています。以下に紹介(一部抜粋)します。
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青春の一ページ
彼女は体育館脇にある太い樹の幹を背もたれにして、独りで立っていた。そうしてこちらの方角を眺めていた。僕は校庭でサッカーの練習をしながら、そういう彼女を意識していた。今日は彼女が転校して行く日だった。
練習相手がこちらに歩み寄って来て、「おい、行ってやれよ。」と言った。
「ん、うん。」僕は煮え切らない返事をして、練習を続けた。
暫く後に彼女は背を向け、体育館の前を通り、生け垣の外へ歩き出した。時折こちらを振り返りながら、ゆっくり歩いて行った。
僕はどうしても別れの言葉が言えず、その場に立ち尽くしていた。
1973年の早春、中学二年の終わりだった。
今思うと、そんな中学生時代に青春のすべてが始まった様な気がする。音楽やファッションや刺激的な様々な事が、あらゆるメディアから洪水の様に押し寄せて来た。僕はそのひとつに感動し、はしゃぎまわっていた。人を好きになった。
今の僕の心の奥底にもあの頃の自分が棲んでいて、青春のエネルギーを放っている。そしてあの時の彼女を好きでい続けている。僕が僕自身である為に。
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