勝手にビブリオバトル その14
- 公開日
- 2020/06/18
- 更新日
- 2020/06/18
行事風景
アメリカを中心に、黒人差別に対する抗議活動が連日報道されています。
中学校社会科歴史分野では、15世紀〜16世紀にかけてヨーロッパにおける大航海時代にヨーロッパ、アフリカ、アメリカで行われた三角貿易での奴隷運搬船。19世紀に南北戦争(1861年)が勃発し、奴隷解放を目指したリンカン大統領の勝利。公民分野では、個人の尊重の部分で、アパルトヘイトの廃止と黒人初の大統領ネルソン・マンデラ氏についての紹介が少しだけ・・・この程度の記載しかありません。
さて今回紹介する本(映画)は、「インビクタス〜負けざる者たち〜」です。これは、DVDで観て感動して、原作本を手に取った作品です。2015年のラグビーワールドカップにおいて日本が南アフリカに劇的な勝利をし、自分がにわかラグビーファンになった時に出会った作品でしたので、昨年のラグビーワールドカップでは、日本と共に南アフリカも注目して観戦していました。今回のワールドカップでは優勝を果たした南アフリカ共和国ですが、ラグビーと黒人差別、黒人として初めて大統領になった“ネルソン・マンデラ”にまつわる実話がこの作品にはあります。
30年近く政治犯として投獄されていた“マンデラ氏”が、釈放され1994年に黒人初の大統領になります。彼が大統領になったことで、差別をしていた政府の白人たちは、職を失うと考え、荷物をまとめ始めるが、“マンデラ氏”は新しい南アフリカをつくるために協力してほしいと彼らに伝えるのです。当時、南アフリカでラグビーは、アパルトヘイトの象徴として富裕層の白人中心のスポーツでもあったため黒人からの人気がなく、さらに人種差別に対する制裁で国際大会から遠ざかっていたため、弱小チームとなっていました。しかし、1995年にラグビーワールドカップの自国開催が決まった時、“マンデラ氏”は黒人に対し、白人を赦し自分の国を愛してほしい「ワンチーム、ワンカントリー」と説得するのです。
黒人も白人も同じ観客席に座り、満員になった決勝戦で南アフリカはニュージーランドを下し、初出場、初優勝を果たします。ラグビーが新しい南アフリカの象徴となった瞬間でした。
「Black lives matter!」普段の生活のなかでは、なんとなく対岸の火事のような、身近には感じられないことかもしれません。しかし、コロナ禍で見られた差別、インターネットでの誹謗や中傷、いじめも根っこは同じです。東日本大震災後の原子力発電所の事故によってつらい経験をした福島県民ならきっと感じることができることがあるはずです。