勝手にビブリオバトル その13
- 公開日
- 2020/06/11
- 更新日
- 2020/06/11
行事風景
先日、3年生のDくんに「先生!6月6日は何の日か分かりますか?」と聞かれ、分からないでいると「ノルマンディー上陸作戦の日です!」と教えてもらいました。周りにいた数人の男子生徒が「Dくんは、めっちゃ戦争に詳しいんですよ!」という話になり、「ノルマンディー上陸作戦が描かれた映画は何だっけ?」と質問したところ、「プライベートライアンです。」とすかさず答えが返ってきました。
今回紹介する本は、そんなDくんのような戦争映画好きにおすすめの、松岡圭祐著「八月十五日に吹く風」です。
本作品は、1943年に行われた日本軍の北部太平洋アリューシャン列島にあるキスカ島からの守備隊撤収作戦をモデルにしたものです。キスカ島を包囲していた連合軍に全く気づかれず日本軍が無傷で守備隊全員の撤収に成功したことから「奇跡の作戦」とも呼ばれています。
第二次世界大戦を題材にした小説や映画は、真珠湾やミッドウェー、硫黄島など激戦地で、雄々しく戦うものが多く、「玉砕」「特攻」などが注目されてしまい、日本人があたかも野蛮で、人命を軽視しているような印象を与えがちです。当時の連合国軍側でも、日本人は戦闘員のみならず、民間人でさえも「玉砕」の名の下に殉ずることができる民族であると解釈しているために、都市部への空襲も正当化されていました。
この作品では、アメリカ側の視点の中心にいる日本語通訳官が、キスカ島を舞台にした「奇跡の作戦」と日本軍指揮官の人道的な行動を通して、「日本人は決して玉砕しか考えない、命の尊さを知らぬ人間ではない」と説き、戦後の米軍占領政策に影響を与えるのです。
8月15日が終戦記念日だということもなんとなく薄らいできている現在、今年は戦後75年という節目の年です。短い夏休みになってしまいましたが、今年の夏は、ぜひ戦争をテーマにした本や映画・ドラマなどの作品に触れる機会をもってほしいと思います。