学校生活の様子

勝手にビブリオバトル その12

公開日
2020/06/08
更新日
2020/06/08

行事風景

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 恩師が「歴史を好きになるには、好きな歴史上の人物を一人もてばいい。」と言っていたことを、このビブリオバトルの記事を書くたびに思い出します。好きな歴史上の人物をたどっていくことで、その時代がなんとなく見えてくる。すると、また一人、また一人と気になる人物が出てくる。これをくり返すことで、教科書では知ることのできない歴史の見方や考え方が養われていくような気がします。

 さて、今回紹介する本は。堺屋太一著「豊臣秀長〜ある補佐役の生涯〜」です。
 名前からイメージできるとおり、“豊臣秀吉”ゆかりの人物(弟)の生涯が描かれた作品です(教科書には秀長は登場しません)。“秀吉”は農民から身を起こし、“織田信長”の家来になり、本能寺の変の後に“明智光秀”を討ち取り、天下人になる。検知や刀狩りなどの政治を進めていくが、突如「朝鮮出兵」など無謀な行動に出る。ぐらいの記述しか教科書には書いてありません。
 この作品の主人公“豊臣秀長”の視点から歴史をみると、家業である農業もやらず、どこに行ったか分からない親不孝な兄(秀吉)が突如家に帰ってきて、兄の代わりに親を支え農業をしている弟(秀長)に「俺の家来にならないか?」と誘ってくる。思いつきのはったりだけで暴走する兄の、下準備や後始末に翻弄されつつも、まじめで実直な彼は、羽柴(豊臣)家の金庫番・官房長官的な立場で兄を支えていく。つまり、戦国時代という歴史の本流に突然投げ出された農民が、期せずして時代のNo.2に上りつめるという話です。また、決して主役の前に出ることのない補佐役の視点で客観的に描かれているため、戦国時代の歴史と登場人物に触れることのことができる作品だと思います。

 数十年後の歴史の教科書を予想すると、このコロナ禍の時代の記述は、おそらく安倍首相や中国の習近平国家主席、アメリカのトランプ大統領が登場し、補助的な資料やコラム欄に、小池東京都知事、吉村大阪府知事、鈴木北海道知事が書かれているかもしれません。しかし、このコロナ禍の時代を支えている医療従事者や運送業など経済を支える多くの人々にも目を向けられる教科書であってほしいと思います。