「気をつけて」のおまじない
- 公開日
- 2019/03/27
- 更新日
- 2019/03/27
桑野小の今
春休み、桑野小のみなさん、元気に過ごしていますか。ここで、一番大切なみなさんの命を守るため考えてほしい作文を掲載します。交通安全ファミリー作文コンクール最優秀作品の作文です。
「気をつけて」のおまじない
今は、楽しく過ごしている。でも、ちょうど1年前の夏はとても苦しかった。
夏休みの三日前だった。もうすぐ夏休みだと思うと、わくわくしていた。友達と遊んだ帰り道、いつもよりちょっと遅くなったので、自転車のスピードが自然に速くなった。前方から車が来た。やばいと思って、ブレーキをかけた。ふらついて、へいにぶつかりそうだったので、逆にハンドルをきった。自転車は、
「ドン、ガン、ガガガガン。」
という音とともに、車にぶつかってしまった。何が何だかわからなかった。あっという間のような、スローモーションのような中で、ぼくは、飛ばされた。体が動かなくなった。声も出なかった。鼻血が流れた。
しばらくすると、救急車が来た。ぼくは、救急車の中で、サイレンの音を聞きながら、頭の中があやふやで、どうなっているかわからず、またこれからどうなるのだろうと不安な気持ちでいっぱいだった。
到着した病院で、処置室に入った。その時になって、ひじがとても痛いことに気づいた。レントゲンやCTというのをやって、待合室に行くと、おかあさんもおばあちゃんも弟二人も心配そうになっていてくれた。その後で、お父さんが作業服のままかけつけてくれた。ぼくは、やっと気持ちが安定してくるのを感じた。生きていてよかったと思った。
それからの二か月半は、大変な毎日だった。ひじを曲げても、のばしても痛むのだ。レントゲンの結果を見て、お医者さんは、「はくり骨折です。はげしい運動はできません。よくなるまで治療を続けましょう」
とおっしゃった。そして、右ひとさし指も不自然に曲がっていたので、固定するための板をつけた。何をするにも不便で、暑くて
「ああ、いやだ。」
と言っているうちに夏休みが終わってしまった。柔道の練習もやるはずだったのに。旅行の予定もあったのに。ぼくは、とても悲しかった。毎日、病院へ通い続けただけの夏休み。
ぼくは、あの夏休みを一生忘れないだろう。苦しかった日々。あの苦しさとひきかえに、ぼくは大切なことを学んだ。生きていることの尊さ。健康であることのありがたさ。そして何より、つらいぼくの支えになってくれた家族のやさしさ。ぼくはみんなに感謝している。
一年後の今。おばあちゃんやお母さんが、「いってらっしゃい。車に気をつけて。」
と、ぼくの背中に声をかけてくれる時、ぼくは、
「うん。わかっている。」
と返事する。「気をつけて」と言ってもらうと、ぼくのゆるんだ心が引きしまる。おまじないのようだ。もう絶対に交通事故になんて、あわないぞ。