勝手にビブリオバトル その27
- 公開日
- 2020/10/26
- 更新日
- 2020/10/26
行事風景
先日10月20日、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏が政界を引退したというニュースが流れました。
みなさんは、「世界で一番貧しい大統領」の彼を知っていますか?
今回紹介する本(絵本)は、ホセ・ムヒカ(著)、くさばよしみ(編)、中川学(絵)「世界で一番貧しい大統領のスピーチ」です。
この作品は、彼の名を世の中に知らしめた2012年のリオデジャネイロ環境会議での名スピーチを絵本にしたものです。
先進国の首相や代表者が環境保全について演説し、最後に登場した彼の演説は、小さな国の大統領ということで、当初誰もが注視せず、閉会を待っているような雰囲気でさえありました。彼は、先進工業国の大量生産大量消費を強く、そして優しく批判するのです。
「今後、インドに住む全ての人々がヨーロッパに住む人々と同じ水準で生活をするようになったら…。地球の環境は…。」
専門家だけでなく、多くの人が知っていて目を背けている事実を、優しい言葉ではっきりと伝えた彼は、スタンディングオベーションの中、一躍時の人となるのです。
スピーチが様々な国の言葉に訳され、映画や本の題材として取り上げられましたが、演説だけが注目されたわけではありません。彼の大統領になるまでの経歴、大統領になってからの生活が注目されているのです。
貧しい幼少期、パン屋さんや花屋さんで働きながら10代から始めた政治活動、反政府勢力のゲリラ活動によって投獄、その後議員として当選し、幾つかの大臣職を経て第40代ウルグアイ東方共和国の大統領に就任します。
彼は、給料の大半を貧しい人に寄付し、公邸での生活や高級な公用車の使用をすることを拒み、郊外の質素な農場で、愛車の古びたワーゲンビートルに乗り、公務の合間に農作業をする。そんな姿から、彼は敬意を込めて「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれているのです。